活用事例・文献

ショートインタビュー

中村アンナ 様

WELLBAGは、線維芽細胞およびiNCMSC*のスフェロイド形成に使用しました。軟骨分化誘導条件下でも均一で良好なスフェロイド形成が可能で、非常に使いやすい印象でした。シリンジで細胞懸濁液を導入できるため、コンタミネーションリスクを低減しやすい点も有用でした。また、スフェロイドの回収が迅速かつ簡便で、私たちのように一度に多数のスフェロイドを必要とするプロジェクトでも、安定して効率よく運用できました。

*iNCMSC:iPSC由来神経堤由来間葉系幹細胞

中村アンナ 様 / 研究員 / 佐賀大学 再生医療・細胞工学研究センター

WELLBAGを用いて肝臓オルガノイドの大量培養を行っています。操作が非常に簡便で、クローズドシステムであるためコンタミネーションリスクを低減できる点が大きな利点です。また、省スペースで培養できるため、多検体の同時運用にも適しています。細胞播種からオルガノイド回収までのプロセスがシンプルで、均一なオルガノイドを安定して作製できる点も魅力です。培養中に顕微鏡観察が可能なため、品質管理もしやすく、オルガノイド研究や再生医療研究に携わる研究者へぜひおすすめしたいシステムです。

聶運中 様 / 客員研究員 / 東京大学 医科学研究所 幹細胞治療研究センター 再生医学分野

ロングインタビュー

「研究で終わらせない、患者様へ届けるために」

iPS細胞由来膵島細胞の製造現場を支えるウェルバッグ

オリヅルセラピューティクス株式会社

膵島細胞治療事業部
CMC製造グループ研究員

牧田あや子 様

牧田あや子 様

iPS細胞を用いた再生医療の実用化が進むなかで、研究成果をいかに安定した製造プロセスへ落とし込み、患者様に届けるかは大きなテーマの一つです。

今回は、iPS細胞由来の膵島細胞を用いた1型糖尿病治療の製造に携わるオリヅルセラピューティクス株式会社・膵島細胞治療事業部・CMC製造グループ研究員 牧田あや子さんに事業内容や現場での課題、そしてウェルバッグ-L350の導入によって得られた効果についてお話を伺いました。

まず、御社の事業内容と牧田さんのご担当されている業務内容について教えてください。

当社は、iPS細胞から分化誘導した膵島細胞を用いて、1型糖尿病、特に重症の患者様に対してインスリン治療からの離脱を目指しています。私たちは「細胞を入れて治す」、「完治を目指す」という考え方で開発を進めています。(図1参照)

私は製造部門に所属していて、iPS細胞から分化させた細胞を実際に患者様へ届けられる状態にする工程部分を担当しています。具体的には、分化させた細胞を一度分散・シングルセル化し、凍結保存後、患者様への使用時に解凍・洗浄・再凝集する工程を担当しています。(図2オレンジ部分参照)

製造現場で求められる再現性

開発を進める中で、特に難しかった点は何でしたか。

最も難しい点は、ラボレベルで確立した手法を、そのまま製造工程へ移行できるとは限らないことです。

製造現場では作業者によるばらつきを抑え、誰が実施しても同等の品質と結果を再現できる工程でなければなりません。

そのためには、

  • どれくらいの時間で処理するか
  • どの温度条件で行うか
  • どうすれば作業者による差をなくせるか

といったことを一つずつ決めていく必要があります。

個人の技術に頼らず、工程として成立させることが大きな課題でした。どうすれば実現できるのかを考えることはやりがいがありましたが、同時に大変でもありました。

ウェルバッグが解決した課題

ウェルバッグ導入によって、どのような課題が解決されましたか。

最も大きいのは、プロセスの再現性向上とコンタミネーションリスクの低減です。

従来の方法では手作業に依存する工程が多く、作業者ごとの差異が品質に影響を与える可能性がありました。さらに、スケールアップに伴って作業量や無菌操作の負担が増加し、安定した品質の維持と汚染防止の両立が求められていました。

ウェルバッグを使うことで、

  • コンタミネーションリスクが減る
  • 操作がシンプルになる
  • 誰が扱っても同じようにできる
  • 作業時間が短縮される
  • 大量処理にも対応しやすい

といったメリットが得られました。

特に、細胞播種工程は、「入れたら終わり」というくらい簡便であり、メリットが大きいです。製造現場では、手技の複雑さがそのままリスクやばらつきにつながるため、再現性の高いツールは非常に重要です。品質試験のために品質管理担当者が培養した際も、同様に再現性高く培養できていました。

また、作業時間の短縮にもつながっています。

従来は必要な細胞数を得るために何度も手作業を繰り返す必要がありましたが、ウェルバッグを使うことで工程が大幅に楽になりました。回収操作も簡単で無駄がなく助かっています。特に回収方法は印象的で、まさに画期的だと感じました。

さらに、形成される細胞凝集塊がきれいで均一なのも印象的です。

見た目のきれいさだけではなく、製造工程として再現性が高いことが安心感につながっています。

製造を前提にした設計が、再生医療の実装を前に進める

1型糖尿病患者に対する再生医療の治験において、インスリン産生細胞を使った様々なアプローチが世界中で行われています。他の技術と比べたとき、御社の強みはどこにあるとお考えですか。

製造について述べますと、基礎研究のバックグラウンドを持ちつつも、製造工程を強く意識して開発していることだと思います。生きている細胞を扱っているので、毎回安定した品質を保つことが難しいというのは、従来の医薬品製造とは大きく異なる点の一つです。それを踏まえ、実際に患者様へ届けるところまで見据えて、工程を組み立てている点が大きいと思います。

再生医療では、研究段階ではうまくいっても、量産や安定供給の段階で止まってしまうことが少なくありません。だからこそ「誰でも同じように作れること」「安定して作れること」「コストを抑えられること」が重要です。

ウェルバッグのようなツールは、そのための大きな一歩になると感じています。

再生医療の社会実装を進めるために

今後、再生医療の実用化・社会実装に向けて必要だと感じることは何ですか?

再生医療を社会に広げるには、

  • 安定して作れること
  • 誰が扱っても同じ結果になること
  • コストを下げること
  • ロット間差を減らすこと

などは欠かせない条件だと思います。

研究で「できた」で終わるのではなく、明日も明後日も同じように作れる状態にしていくことが、社会実装には必要だと考えています。

最終的には、1型糖尿病の患者様が抱える日々の負担を少しでも減らし、多くの患者様に届けたいと思っています。

図1.オリヅルセラピューティクス様の取り組み
図2.OZTx-410の製造フロー

編集後記

牧田さんのお話から、再生医療の実用化において、研究成果を“製造可能なプロセス”へ落とし込むことの重要性を強く感じました。ウェルバッグ-L350は、再生医療の製造現場における再現性と安全性の確保に貢献するツールとして、その可能性を示しています。

このインタビューは、2026年5月に行われました。

文献

  1. Ryo S and et al. “Microwell bag culture for large-scale production of homogeneous islet-like clusters.” Sci. Rep. 2022 12 5221
  2. Kensuke S et al. “CDK8/19 inhibition plays an important role in pancreatic β‑cell induction from human iPSCs.” Stem Cell Research & Therapy 2023 14 1
  3. Midori Y et al. “Xenogenic Engraftment of Human-Induced Pluripotent Stem Cell–Derived Pancreatic Islet Cells in an Immunosuppressive Diabetic Göttingen Mini-Pig Model.” Cell Trans 2024 33 1-17

その他

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