財務担当役員メッセージ

副島 正和

取締役専務執行役員
経営戦略機能統轄
兼 経理・財務管掌および
IR・グループ調達戦略担当

2023年度・2024年度の業績

原材料・エネルギー価格高騰に対する売価転嫁が進み売上高は4.9%、営業利益は357.6%の増収増益に

2023年度の業績は、売上高9,506億円(前期比4.9%増)、営業利益338億円(同357.6%増)と増収増益を達成しました。経常利益は、持分法投資利益が減少したものの、為替差益を計上したことにより387億円(同181.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、減損損失を計上したことにより230億円(同122.7%増)となりました。売上高が増加した主な要因としては、国内包装容器事業を中心に原材料・エネルギー価格高騰分の売価転嫁が進んだことと、急激な円安の影響等によるものです。営業利益の大幅な増加は、原材料・エネルギー価格の高騰に対する売価転嫁とコストダウンの取り組みが反映されたと考えています。
売価転嫁には原材料やエネルギー価格の高騰が顕著となった3年前から取り組んでおり、2023年度までに3年間の累計でコストアップ分の96%ほどまで転嫁が進んでいます。

2024年度の当社グループの業績については、機能材料関連事業における磁気ディスク用アルミ基板の市況が回復基調にあり販売数量増が見込まれるものの、北米エンジニアリング事業の市況悪化が継続すると予想し、売上高9,200億円(前期比3.2%減)、営業利益300億円(同11.4%減)、経常利益330億円(同14.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は240億円(同4.0%増)を見込んでいます。

  • 売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は2024年11月8日公表値

「資本収益性向上に向けた取り組み2027」における成長戦略の進捗

車載用二次電池用部材や太陽電池用部材など新時代を担う製品が着実に成長

2023年5月に公表した「資本収益性向上に向けた取り組み2027」では、「成長戦略」と「資本・財務戦略」を両輪に、さまざまな改革を通じて資本収益性の向上を図ることを大きな方針としています。

初年度である2023年度における「成長戦略」の成果としては、鋼板関連事業において、電気自動車やハイブリッド車の普及拡大の追い風を受けて、東洋鋼鈑(株)が製造する車載用二次電池用部材(ニッケルめっき鋼板)向けの販売が順調に伸び、利益にも貢献しました。また、機能材料関連事業では、当社が持つ水分バリア技術を活用したバリアフィルムの開発が進み、太陽光発電用途の保護フィルムとして2024年中の上市を予定しています。これらの車載用二次電池用部材とバリアフィルムは、今後の大きな成長を期待しています。
また、「事業ポートフォリオの最適化」も重要な方針の1つとしています。この方針に従い、外部環境の変化を踏まえつつ、各事業の収益性を精査し、収益性の低い事業から高い事業への経営資源のシフトを進めています。
また、「中期経営計画2025」および「資本収益性向上に向けた取り組み2027」策定以降、ROEの目標を設定し、この目標に寄与しない投資は原則として行わないことを徹底しています。
この明確な目標のもと、包装容器事業には必要な投資を行う一方で、成長分野と位置づけているエンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業へ積極的に経営資源を配分し、未来を切り拓くのにふさわしい事業ポートフォリオを再構築する考えです。
成長事業のさらなる飛躍のための事業買収や、不採算事業の整理を目的とした事業売却など、多面的な戦略でM&Aも効果的に活用していく方針です。

「資本収益性向上に向けた取り組み2027」における資本・財務戦略

2023年度の自己株式取得は200億円を実施 純資産額の増加により2024年度は300億円を予定

「資本収益性向上に向けた取り組み2027」における、資本・財務戦略の中で、特に重点を置いているのが「資産効率の向上」です。その実現に向け、配当および自己株式の取得を通じた株主還元の大幅強化を打ち出しており、2023年度は計画通り200億円の自己株式取得と、1株当たり90円(配当総額162億円)の年間配当を実施しました。しかし、予想を上回る円安の進行や株価の上昇により純資産額が増加したため、2024年度の自己株式取得額を当初計画の200億円から100億円を積み増し、計300億円としました。これは、変化への柔軟な対応と同時に、計画の達成に向け着実に前進する意志を示したものであり、2027年度までに累計1,000億円の自己株式取得という当初の計画に変更はありません。
政策保有株式の縮減については、「中期経営計画2025」で定めた400億円と「資本収益性向上に向けた取り組み2027」で追加した200億円を合わせた総額600億円の売却を行う予定です。計画は順調に進み、残り売却額は約350億円となりました。株価上昇を考慮すると、400億円以上の売却規模も想定しつつ、市場環境の推移などを見極めながら進めていきます。

  • 図は左右にスクロールできます

「資本収益性向上に向けた取り組み2027」におけるキャッシュアロケーション

有利子負債に頼らない資金調達と各事業での適切な成長投資を推進

「資本収益性向上に向けた取り組み2027」において、営業キャッシュフローおよび資産売却・資金調達を原資として、投資と株主還元に戦略的に配分することをキャッシュアロケーションの柱として明示しました。
具体的には2023~2027年度に営業キャッシュフローで約3,700億円、資産売却・資金調達で約800億円のキャッシュインが見込まれており、これを投資に約2,700億円、株主還元に約1,800億円を配分する計画です。

2023年度までの投資や新規開発案件の進捗については、包装容器事業では「EcoEnd™」の開発や国内最軽量アルミ缶の量産化など、環境配慮型製品の推進を行いました。エンジニアリング・充填・物流事業では、タイにおける飲料充填ラインを増設し、2023年12月から稼働しています。
鋼板関連事業では車載用二次電池関連設備への投資に注力し、新設・増設した製造設備が各々2023年11月、2024年1月から稼働しています。
2024年度以降については、東南アジアを中心とした成長市場での充填・包装容器事業の拡大や、車載用二次電池などすでに成長軌道にある事業の増強に経営資源を振り向けるとともに、将来の成長分野への設備投資やM&Aにも積極的に取り組んでいきます。なお2024年度の投資額は、2024年2月に締結したマレーシアPCGの株式取得費用を含め総額約600億円を見込んでいます。

ステークホルダーの皆さまへ

2023年5月に公表した「資本収益性向上に向けた取り組み2027」は、東洋製罐グループの果敢な意思表明として社内外に大きなインパクトを与え、おおむね好意的なご評価をいただいたと感じています。
社内への影響で大きいと感じたのは「危機感の共有」です。当社グループはこれまで、売上高、販売数量、業界シェアを重視する傾向にありましたが、私は社内の各種会議体において「売上よりも利益を重視すべきで、利益がなければ会社は存続できない」と常に訴えてきました。その姿勢は徐々にグループ全体に浸透し始めています。
今後も、ステークホルダーとのコミュニケーションをこれまで以上に密にして、企業価値向上のための取り組みに一層磨きをかけるとともに、グループ内のコミュニケーションをより活発化させ、東洋製罐グループの持続的な成長に寄与したいと考えています。