脱炭素社会へ向けて
2030年目標と2022年度実績
大気中の温室効果ガス(以下、「GHG」)濃度上昇に伴う地球温暖化の進行は、人々の生活や社会に大きな負の影響を与えます。東洋製罐グループは事業活動、製品・サービスの双方からGHG排出削減に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献します。
「Eco Action Plan 2030」に基づいた、2022年度のグループ全体での目標進捗状況は以下のとおりです。
評価指標:★★★目標を達成できた ★★目標に対してわずかに未達成 ★取り組みが不十分
※表は左右にスクロールできます
環境ビジョン | 2022年度実績 | 評価 |
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「Eco Action Plan 2030」目標 | ||
【脱炭素社会】 |
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1 ★★★ |
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2 ★ |
気候変動への取り組み(TCFD提言への対応)
東洋製罐グループは、持続可能な社会の実現に貢献するため、2030年の定量的、定性的な経営目標である「中長期経営目標2030」を設定し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した活動を推進しています。また、2021年7月には「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下、「TCFD」)の提言に賛同を表明しております。本項目ではTCFDの推奨する情報開示フレームワークに則って、当社の気候変動に対する取り組みを紹介します。
ガバナンス
東洋製罐グループは、グループ全体のサステナビリティ関連の活動を統括するグループサステナビリティ委員会を設置しており、同委員会はグループリスク・コンプライアンス委員会とともに、重要委員会の1つと位置づけられています。
グループサステナビリティ委員会は、委員長である当社社長とビジネスおよびコーポレートを担当する当社グループの役員により構成され、原則として年1回開催されます。本委員会は、サステナビリティ経営推進に関する事項についての協議を行う場であり、目標・計画に対する進捗管理に加え、社会的・国際的情勢や法規制の動向、外部環境の変化を踏まえた計画の見直し、新規施策の検討を実施しています。また、同委員会での決定事項は、その下部に設置されたESG(環境、社会、ガバナンス)の各推進分科会で各社の担当役員・主管部署と共有され、実行に移されます。グループサステナビリティ委員会の活動内容は委員会開催後遅滞なく取締役会に報告され、監督を受ける体制となっています。
また、2021年度より当社取締役(社外取締役除く)を対象とする業績連動型株式報酬制度を導入しました。本制度では、株式報酬額の算出基準の一部に、気候変動の活動目標(詳細は「指標と目標」を参照)の進捗をはじめとしたESG活動の取り組み状況等を総合的に勘案して決定するサステナブル指標を用いております。
当社は、本体制のもとで経営と執行が一体となり、気候変動を含むサステナビリティへの対応を強力に推し進めてまいります。
※図は左右にスクロールできます
戦略
気候変動シナリオの選択
IEA(国際エネルギー機関)等が公表する気候変動シナリオを参照し、1.5~2℃、4℃の各シナリオを選択しました。気候変動影響が中長期の期間の中で顕在化していく性質のものであるとの認識により、時間軸としては2030年における気候変動の影響を分析しています。2023年度は2022年度までの分析で考慮されていなかった事業領域を追加し、国内外の主要な事業領域を網羅するかたちでの分析を行いました。 分析対象事業:包装容器事業、エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業
想定されるシナリオの世界観
1.5~2℃シナリオ(RCP1.9~2.6相当)
炭素税や再生可能エネルギー導入によるコスト増と環境規制の強化が見込まれる一方、環境配慮型製品の需要増などの機会拡大も想定されます。
※図は左右にスクロールできます
4℃シナリオ(RCP8.5相当)
脱炭素化に向けた動きは相対的に鈍く、異常気象の激甚化によって製品の生産遅延・停止が発生する可能性がある一方、気温上昇にともなう製品需要の増加が見込まれます。
※図は左右にスクロールできます
シナリオ分析のプロセス
重要リスク・
機会の特定
- 当社グループの主要な事業領域におけるリスクと機会の情報を収集
- 政策や市場などの観点から、自社で発生し得る移行・物理的リスクと機会を特定
- 特定したリスクと機会が自社事業に与える影響を考察し、特に大きな影響を与えうる重要リスク・機会を絞り込み
将来予測データの
収集
- 重要リスク・機会に関する信頼度の高い外部の将来予測データを収集
- 将来予測データをシナリオごとに整理し、将来起こりうる世界観について社内関係者と検討
事業影響の試算
- 収集した将来予測データと自社内の数値を用い重要度の高いリスクと機会によってもたらされる事業インパクトをシナリオごとに定量評価
対応策の検討
- 事業影響の特に大きい気候変動リスク・機会への対応方法を検討
- 必要に応じ、追加取り組みの推進体制を整備
シナリオ分析結果
移行リスク
- 気候変動政策が導入される1.5~2℃シナリオにおいて、温室効果ガス(以下、「GHG」)排出への炭素税賦課により操業コストが上昇するリスク等を特定しました。
- 対応案の検討では、「Eco Act ion Plan 2030」の目標達成が、負の影響を一定程度削減することを確認しました。2022年度に導入したインターナルカーボンプライシング制度(ICP)を活用しながらGHG削減投資に取り組むとともに、各施策の財務影響面の解像度を高め、財務計画と統合するかたちで目標達成に向けた活動を推進していきます。
物理的リスク
- 気象変化に伴い、水ストレスの高い地域で渇水のリスクが高まることや異常気象の激甚化による洪水被災リスクが高まることが、経営に大きな影響を与えうることを確認しました。
- 渇水や洪水被災も含む水のリスクに関する総合マネジメント・システムを構築(2024年より運用開始予定)し、これらの負の影響の軽減に努めていきます。
機会
- 1.5~2℃シナリオにおいて、EV・PHEV向けの電池部材および環境配慮型製品の需要増加に関する機会を特定しました。
- きたるべき需要の増加の見極めと、生産体制強化等の準備を進め、これらの機会を着実に当社グループの成長につなげていけるよう努めます。
シナリオ分析結果一覧
移行リスク
※表は左右にスクロールできます
重要なリスク・機会の項目 | 時間軸 | 1.5~2℃シナリオ | 4℃シナリオ | 当社グループの対応 | |||
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政策・ 規制 |
炭素税負担 |
中期 |
新たな炭素税の導入で操業コスト101億円増加※1 |
新たな炭素税は導入されない |
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電力単価変動 |
短期 |
電力単価の増加による操業コスト増加 |
電力単価の低下による操業コスト減少 |
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バージンプラス チックを使用 した容器包装 へのプラス チック税課税 |
中期 |
新たな課税の導入で税賦課分を単価から差引いた場合の売上減少 |
新たな課税は導入されない |
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飲料ボトルへの 再生プラスチック 使用義務化 |
中期 |
再生プラスチックの含有割合引き上げのためのコスト増加 |
新たな再生プラスチック使用義務化は導入されない |
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森林伐採税による 原紙価格変動 |
中期 |
原紙調達先への森林伐採税賦課により原紙価格上昇 |
原紙調達先への森林伐採税賦課は行われない |
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原材料 価格 |
原油価格変動に よる石化原料 価格変動 |
短期 |
原油需要低下による石化原料調達コスト減少 |
原油価格の上昇による石化原料調達コスト増加 |
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炭素税による 原材料価格変動 |
中期 |
新たな炭素税の導入で石化原料、鋼材、アルミニウム、原紙、ガラスの調達コスト増加※1 |
新たな炭素税は導入されない |
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グリーンスチール 普及の影響 |
中期 |
グリーンスチール普及による鋼材調達コストの増加 |
グリーンスチールは普及しない |
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低炭素・ 次世代 技術 |
FCVトラック への切り替え、 自動車貨物減少 |
中期 |
FCVへの切り替えコスト負担、モーダルシフトによる収益減 |
FCVへの切り替えは進まずモーダルシフトも進展しない |
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- 1.5℃シナリオにおける財務影響額を記載
- Eco Action Plan 2030における各種目標
物理的リスク
※表は左右にスクロールできます
重要なリスク・機会の項目 | 時間軸 | 1.5-2℃シナリオ | 4℃シナリオ | 当社グループの対応 | |||
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気象変化 | 渇水による 取水停止 |
中期 |
水ストレスの高い地域において生産活動が制限される |
水ストレスの高い地域において生産活動が制限される |
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気温上昇に伴う 空調への影響 |
中期 |
夏季空調電力使用量増加により操業コスト増加 |
夏季空調電力使用量増加により操業コスト増加 |
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森林火災による 紙パルプ供給 への影響 |
長期 |
森林火災の増加により原紙調達コストが増加 |
森林火災の増加により原紙調達コストが増加 |
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農産物収量の 減少 |
長期 |
大麦(ビール原料)、コーヒー豆、上等米(日本酒原料)の収量減少で売上減 |
大麦(ビール原料)、コーヒー豆、上等米(日本酒原料)の収量減少で売上減 |
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異常 気象の 激甚化 |
被災に伴う物損 ・逸失利益 |
短期 |
洪水リスクの上昇による物損・逸失利益発生の増加 |
洪水リスクの上昇による物損・逸失利益発生の増加 |
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保険料の増加 |
短期 |
洪水・台風の増加に伴う保険コストの増加 |
洪水・台風の増加に伴う保険コストの増加 |
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機会
※表は左右にスクロールできます
重要なリスク・機会の項目 | 時間軸 | 1.5~2℃シナリオ | 4℃シナリオ | 当社グループの対応 | |||
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消費 行動の 変化 |
環境配慮型製品 の需要増加 |
中期 |
環境配慮型製品の売上増加 |
環境配慮型製品への需要は高まらない |
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殺虫剤の需要 増加 |
長期 |
夏場の平均気温上昇により殺虫剤需要が増加しエアゾール充填事業の売上増加 |
夏場の平均気温上昇により殺虫剤需要が増加しエアゾール充填事業の売上増加 |
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低炭素 商品の 拡大 |
EV・PHEVの普及 |
中期 |
EV・PHEVで使用される電池部材の需要が増加し、売上が増加する |
EV・PHEVで使用される電池部材の需要が増加し、売上が増加する |
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財務影響+100億円以上:
財務影響+100億円未満:
財務影響±10億円未満:
財務影響▲100億円未満:
財務影響▲100億円以上:
リスク管理
東洋製罐グループは、「グループリスク及び危機管理規程」に基づくリスクマネジメント体制を構築しています。同規程において、会社の経営に重大な影響を及ぼす8つの重要リスクを特定しており、気候変動を含む「環境リスク」もその1つに挙げられています。重要リスクの状況は、グループリスク・コンプライアンス委員会にてモニタリングされ、必要に応じて対応の改善や予防措置が講じられます。
前出のグループサステナビリティ委員会で協議された気候変動に関わる重大なリスクは、グループコンプライアンス委員会に報告されます。ここで協議された事項に関しては必要に応じて経営戦略会議、経営執行会議に報告され、事業戦略に反映されます。
※図は左右にスクロールできます
指標と目標
GHG削減量
東洋製罐グループは、2050年長期目標として、GHG排出量を大幅に削減し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。そのため、「Eco Action Plan 2030」において、2030年でのGHG排出量の削減目標を右記のとおり定めています。これらの目標は、国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)の新基準「1.5℃目標」の認定を取得しています。
事業活動でのGHG排出量の推移(Scope1、2)※
※図は左右にスクロールできます
- 一部の海外事業所の集計が重複していたため、修正しました
サプライチェーンでのGHG排出量(2022年度)
※図は左右にスクロールできます
環境配慮型製品の売上高の全売上高に占める比率
東洋製罐グループは持続可能な社会の実現に貢献するため、「環境配慮型製品・サービスの開発と提供」をマテリアリティ(重要課題)の一つとしています。
気候変動のシナリオ分析において、「消費行動の変化による環境配慮型製品の売上増加」が成長の機会として特定されており、その進捗を把握する指標として、全売上高に占める当該製品の売上高比率を管理します。
今後の施策
今後は、2050年度のカーボンニュートラルに向けた移行計画の策定を進めていきます(2024年度開示予定)。
再生可能エネルギーの活用
東洋製罐グループは、事業活動による温室効果ガス排出量を削減する取り組みの一環として、太陽光発電設備の導入を進めています。
太陽光発電システム導入状況(売電事業としての設置を除く) 2023年4月時点
※表は左右にスクロールできます
会社・事業所 | 運用開始 | GHG削減量 (ton-GHG/年) |
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日本クロージャー小牧工場 |
2019年3月 |
360 |
Toyo Seikan(Thailand)(タイ) |
2019年10月 |
280 |
Toyo Filling International(タイ) |
2020年8月 |
100 |
東罐興業小牧工場 |
2020年12月 |
240 |
東洋鋼鈑下松工場 |
2021年2月 |
80 |
東洋メビウス熊谷物流センター |
2023年3月 |
122 |
東罐興業小牧工場
Toyo Filling International(タイ)
東洋鋼鈑下松工場
東洋メビウス熊谷物流センター
モーダルシフトの推進
東洋製罐グループは、効率的なトラック輸送スキームの構築やモーダルシフトなどを積極的に進めることで、より効率的で環境負荷の少ない輸送に取り組んでいます。
これまでの主な取り組み
※表は左右にスクロールできます
2015年10月 |
東洋ガラス物流 |
輸送効率の良い大型31フィートコンテナを採用 |
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2017年12月 |
東洋製罐 |
31フィートコンテナを採用 |
2018年11月 |
東洋メビウス |
第5回モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)を受賞 |
2019年9月 |
東罐ロジテック |
国土交通省 物流総合効率化法に基づく「総合効率化計画」に認定 |
2021年4月 |
東洋製罐 |
「令和2年度エコシップ・モーダルシフト事業認定事業者」に認定 |
今後も、東洋製罐グループは持続可能な社会の実現に貢献していくため、環境負荷軽減へつながる活動に積極的に取り組んでいきます。
容器包装関連団体との3R推進や気候変動緩和活動
東洋製罐グループは、日本国内の容器包装8素材(スチール缶、アルミ缶、プラスチック製容器包装、PETボトル、紙製容器、飲料用紙容器、段ボール、ガラスびん)のうち7素材の容器包装を製造しており、3Rを推進する各素材の個々の団体やその連合団体への理事、委員および活動資金(会費)を拠出し、主要メンバーとして3Rの推進や気候変動緩和のための温室効果ガス削減活動を行っています。
2020年10月、日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。東洋製罐グループはこれに対応し、2021年に「低炭素社会」の実現から2050年のカーボンニュートラルを目指した「脱炭素社会」の実現に変更し、2030年度に向けた中長期目標を上方修正しました。また、東洋製罐グループは、「エネルギー使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」や「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」等、国の気候変動に関連する法規制を支持し、年に1回行政へエネルギー使用量、省エネルギー目標の達成状況、温室効果ガス排出量の報告書を提出しています。そして、国が推進しているTCFD提言への取り組みを支持し、情報を公開しています。