自然共生社会へ向けて
2030年目標と2023年度実績
「Eco Action Plan 2030」に基づいた、2023年度のグループ全体での目標進捗状況は以下のとおりです。
評価指標:★★★目標を達成できた ★★目標に対してわずかに未達成 ★取り組みが不十分
※表は左右にスクロールできます
2030年度目標(Eco Action Plan 2030) | 2023年度実績 | 評価 |
---|---|---|
自然共生社会 |
||
|
|
★★★ |
|
|
★★★ |
水資源との向き合い方
水資源における基本的な考え方
人口増加や経済成長に伴う生活水準の向上により、世界の水需要は今後さらに増加し、水が不足するエリアの拡大が予測されています。また、異常気象の激甚化による被災リスクも各地域で増加します。 水は当社の事業活動に不可欠であり、また、当社の工場等が立地する地域においても大切な資源であることを認識しています。したがって、当社では、水資源への依存度が大きい拠点の水利用効率化に向けたアクションを強化しています。また、生産拠点が位置する流域の水リスクが高く、かつ事業影響が大きい拠点でのリスク低減に向けた取り組みを推進します。
目標
当社は、生産上必要な水使用量を明確に把握し、余分な水使用量を抑えることで、効率的な水利用や節水の推進に取り組んでいます。中長期環境目標「Eco Action Plan 2030(以下“EAP 2030”)」では、「事業活動における取水量を売上高原単位で前年度比1%改善」という目標を掲げました。 2023年の実績は、6%削減となり、目標を達成しました。2024年も引き続き、効率的な水利用とリスク低減活動に取り組んでいきます。
水リスクの評価
TCFDの物理リスクの中でも渇水リスク、洪水被災リスクが当社の経営に大きなインパクトを与えることが確認されています。そのため、生産拠点が位置する流域における水資源リスクを事前に把握し、適切な対策を講じるためにリスク評価を行っています。今後もリスク評価を継続し、リスクの変動を定期的に把握するとともに、リスク低減に向けた取り組みを強化していきます。
国内外のグループ主要生産拠点約93拠点を対象とし、水リスクを「水資源、地下水、渇水、水質、水害、規制・評判」の6つに分類し、評価を行っています。
評価にあたっては、まず、水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いて拠点の立地によるリスク評価と、TNFD開示ツール「ENCORE」を用いて、事業活動が及ぼす依存、影響度を評価しました。それぞれのリスク評価を総合し、外部要因評価を3段階(Level 1~Level 3)で評価しました。外部要因評価結果がLevel 1のリスクが高い拠点を対象に、拠点の取水量、ハザードマップ、アンケートの内容を加味して、リスクの高い優先拠点を抽出しました。
水リスク評価フロー
※図は左右にスクロールできます
リスク評価について
評価結果
優先拠点に抽出された拠点は下表に示す7拠点でした。これらの拠点では既にEAP2030に掲げられた、取水量の売上高原単位1%改善を目標として、水の循環利用や有効活用の施策を実施しています。また、防水提や止水版の設置、BCP(事業継続計画)対策などを施し、水害によるリスク低減に努めています。東洋製罐グループでは、今回の評価で抽出されたリスクの高い拠点を中心に、水リスクの最小化を図るとともに、各地域の水課題の解決に貢献します。
優先度1に抽出された拠点
水資源リスク | 海外2拠点 |
---|---|
規制評判リスク | 海外1拠点 |
水害リスク | 国内3拠点 海外3拠点 |
東洋製罐グループの取り組み
海洋プラスチックごみ問題に対する取り組み
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンスを通じた活動
地球規模の新たな課題である海洋プラスチックごみ問題。その解決に向け、プラスチック製品のより持続可能な使用や代替素材の開発、導入を推進し、官民連携でイノベーションを加速する必要があります。そのような背景から、サプライチェーンを構成する幅広い事業者で構成される「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」が2019年1月に設立されました。参加企業は2023年4月時点で486社・団体にのぼり、サプライチェーンの中の幅広い業種の企業が参加しています。東洋製罐グループホールディングスは幹事会社として設立準備段階から参加し、業種を越えた関係者との情報共有や連携促進を担う普及促進部会の主要メンバーとして活動しています。
また東洋製罐グループは、2020年に新たに策定されたアクションプランを実行する5つのワーキンググループ活動全てに参画し、そこで行われる実証試験の計画づくりなどの作業に参加しています。CLOMAでのこれらの活動を通じて、東洋製罐グループはこれからも海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献していきます。
樹脂ペレット漏出防止対策の徹底
プラスチック製品の原料である樹脂ペレット(数mmの大きさ)が工場敷地外へ漏出すると、海洋プラスチックごみとなってしまいます。以前より、路面にこぼれた樹脂ペレットが工場敷地外へ漏出しないよう、雨水溝に金網を設置するなどの対策は実施してきましたが、2019年に漏出ゼロを目指した管理徹底のため、「東洋製罐グループ樹脂ペレット漏出防止ガイドライン」を策定しました。「漏出可能性のある場所の特定および防止策の検討・実施」「日常管理」「監査」など、各社の環境マネジメントシステムの中で運用しています。
ペレット捕集用スクリーン設置例(雨水枡)
設備のリスク管理
東洋製罐グループでは、工場からの油の流出、排水処理の不具合などによる異常排水の流出など、公共用水域(河川や海など)や地下水の水質に悪影響を及ぼしうる事故を未然に防止することを目的として、各社の環境マネジメントシステムに従いリスク管理に努めています。特に環境事故の発生リスクの高い設備は、2021年度に制定した「東洋製罐グループ設備の環境リスク管理ガイドライン」をもとに、設備の配管、槽類、バルブなどの劣化や損傷などを定期的に管理しています。今後も継続的に各社の環境マネジメントシステムに基づいてPDCAを回すことで改善を図っていきます。
美化活動をごみ拾いアプリ
「ピリカ」で発信
東洋製罐グループでは、ごみ拾いアプリ「ピリカ」を活用して、各社で行っている美化活動の様子を公開しています。2022年度の取り組み結果は、参加者509名、拾ったごみの量9,536L で、グループ内での最多参加人数は東洋製罐基山工場の122名でした。
今後も地域や関係先と連携しながら、グループでの美化活動に取り組んでいきます。
日本ナショナル製罐
琉球製罐
事業会社の取り組み
水資源に関する取り組み
東洋製罐株式会社広島工場 防水壁、防水扉の設置
2018年の西日本豪雨にて浸水被害を受けましたが、今後同様な自然災害が発生した場合に従業員の生命及び工場を守るため、2020年6月に敷地境界部分に高さ3mの防水壁と防水扉を設置し、敷地内への浸水を防ぐとともに、近隣住民の避難場所としても活用していただいています。
防水壁
防水扉壁
近隣住民避難階段
東洋ガラス株式会社千葉工場 雨水の回収システム
東洋ガラス株式会社千葉工場では、製函場の屋根に振った雨水を回収し、原水槽へ補給し、雨水を有効利用しています。年間約2,606㎥の雨水を回収しています。
工水フロー図
雨水の回収配管設置
ダムの外来魚調査に使える環境DNA チップを開発
東洋鋼鈑が医療分野において開発したDNAチップ遺伝子解析システムが、山口大学、日本工営株式会社との共同研究により、環境分野に応用できることがわかりました。
従来、ダム貯水池に生息している外来魚の実態調査は、調査員がダムに潜ったり、網で捕獲していたりしたため、コストや手間がかかっていました。今回開発した環境DNAチップを用いてダム貯水池の水1Lを採取し分析を行うと、どのような外来魚がいるのかを簡単に判別することができます。外来種とは、本来その地域に生息していない生物種の総称であり、その侵入によって生態系は深刻なダメージを受けていることが知られています。
ダム貯水池の水には、外来魚のフンや鱗に含まれるごくわずかなDNAが存在しており、この環境DNAチップは、そのような微量なDNAも捉えることができます。
この研究成果は2022年6月に国際学術誌「Landscapeand Ecological Engineering」に掲載されました。
東洋鋼鈑は今後も医療用のDNAチップを拡大していきますが、このようなダム貯水池や河川の環境保全といった、SDGsにつながる環境分野にも貢献していきます。
ブルーカーボン・ネットワークへの参画
SDGsのゴール「13.気候変動に具体的な対策を」と「14.海の豊かさを守ろう」の観点から「ブルーカーボン」が近年注目されています。陸上の植物と同じように、海草や海藻は生長する際に二酸化炭素を吸収します。こうした海洋の生態系によって貯蔵される炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれています。
東洋ガラスは、緩水溶性ガラス※の技術を保有しており、ガラスに溶け込ませた有効成分がゆっくりと水に溶け出す特性を利用し、藻場の再生などブルーカーボン生態系の促進に貢献しています。
このたび東洋製罐グループホールディングスは、NPO法人ブルーカーボン・ネットワークの賛助サポーターとなり、国内外のブルーカーボンや藻場再生の取り組みに関する情報共有および支援や、気候変動、海の生態系などに関する情報共有を行っています。
2022年10月には熱海で開催されたブルーカーボン・ネットワークのセミナーと現地見学会に参加し、2023年2月にはブルーカーボンに関する新たなアプローチなどに関する意見交換を行いました。
今後も、ブルーカーボンに関する多様な研究機関や団体、企業などと協働し、海洋の生物多様性保全や気候変動対策に取り組んでいきます。