
水に溶ける緩水溶性ガラス「イオンカルチャー」
0当社グループは、海藻などが二酸化炭素を吸収するブルーカーボン※1の普及に向けて、海藻の成長を促す成分を海洋に浸透させる「イオンカルチャー(藻類増殖材)」を全国の漁港などへ展開しています。加速する地球温暖化への対策として、この度、従来品と比較して3倍早く海に溶け出る新製品を開発しました。新しいイオンカルチャーの普及に努めることで、より海の脱炭素に寄与してまいります。
※1 国連環境計画(UNEP)が2009年に命名した、海洋生物の働きによって海洋環境に吸収・貯留されている炭素。ワカメやコンブなどの海洋植物は、大気中のCO2を光合成により吸収し、その一部を海底に長期貯留するという重要な役割を担っており、今後の地球温暖化対策として近年注目を浴びています
イオンカルチャー(藻類増殖材)は、海洋植物の成長を促進する二価鉄やケイ酸、リン酸イオンといった成分が、ゆっくりと水に溶け出すよう成分調整を行ったガラス製品です。
株式会社不動テトラと共同で、磯焼け※2の原因とされている二価鉄イオンの不足を補うガラスの開発に着手し、1993年にイオンカルチャーを製品化、2023年にさらに高性能なイオンカルチャーの開発に成功しました。
従来品は溶け切るまでに約10年かかり、海藻の成長促進効果を測定するのに期間を要するという課題がありました。新たに開発した製品は、成分を調整することで約3年で溶けるようになり、海藻の成長による二酸化炭素吸収効果の実証実験などでも採用されやすくなりました。成分溶出速度が3倍になることで光合成促進効果の向上や有効範囲の拡大が見込めます。
2023年度中に地方自治体などに向けた新製品の販売を開始する予定であり、港や岸壁の消波ブロックの表面に貼り付けて海藻の成長を促すことで、ブルーカーボン生態系が構築されることが期待されています。
※2 沿岸海域に生息する海藻の多くが死滅し、それに伴ってアワビなどの水棲生物が減少し、漁業に大きな打撃を与える現象