本企画展は、東洋製罐グループが製造しているダイヤカット缶と、CRUSHMETRIC GroupのSwitchPenの形状が偶然にも同形状であることがきっかけとなっています。宇宙工学を応用したダイヤカット缶と、アーティストの感性から生まれたSwithchPenは、全く異なるアプローチから同じ形状にたどり着きました。そんな偶発的な出会いの中においても、省資源を目的とする東洋製罐グループと、空き缶に新たな価値を与えるアートの発想には、環境に対する想いが共通しています。
CRUSHMETRICは2018年、アメリカのアーティストであるノア・デレッダ氏のアートワークから生まれたプロダクトブランドです。元々同氏は、旅行中の退屈しのぎとして親指を使って空き缶を部分的に凹ませ、変形させる遊びを行っていました。様々な変形を試し続ける中で、美しいアートとなり得る缶のクリエイティブ性に魅了され、2004年よりアート表現としての作品制作を開始。同氏は、金属缶を素材として“変形の制限”と向き合いながら、これまで50以上のユニークなデザインを創り出しています。
今回の出会いのきっかけとなったSwitchPenの形状デザインは、同氏が製作した作品がモチーフになっています。SwitchPenはペン先を出し入れする際に形状がスムーズに変化する(ノックをすることで表面がクラッシュし、ペン先が出る)仕様となっており、当社グループが製造するダイヤカット缶と同じ形状となっています。
東洋製罐グループが製造するダイヤカット缶は、1969年に三浦公亮・東京大学名誉教授が発表した「PCCP(擬似円筒形凹多面体Pseudo-Cylindrical Concave Polyhedral)シェル」を参考に開発され、1996年より生産を開始しました。PCCPシェルは、宇宙工学(超音速機の胴体の破壊モデル)の研究過程で、破壊により変形した形状が非常に安定した構造となっていたという発見を基に考案されたものです。この変形は、「等長変換」と呼ばれ、折り紙のように折っても、素材そのものの伸び縮みがない形状であり、上下方向の強度はほとんど変わらないにも関わらず、横方向の強度が増す安定した構造でした。
この宇宙工学で考え出された「頑丈な形」を応用し、飲料缶の軽量化(材料削減)および強度維持の両立を狙い開発されたのがダイヤカット缶です。この「頑丈な形」を採用することで、スチール製ダイヤカット缶は強度を維持しつつ従来比 約30%の材料削減を実現しました。
また、アルミ製のダイヤカット缶に関しては、開缶時に圧力が抜けることで音とともにダイヤカット形状が現れて消費者にサプライズを与えるほか、光の反射による光沢感があり、製品の冷涼感を効果的にあらわす働きもしています。
缶を開けることで圧力が抜けてダイヤ形状を浮き上がらせるアルミ製ダイヤカット缶、アルミ缶に親指だけでダイヤ等の形状を作り出すノア・デレッダ氏のアート、そしてボールペンのノック機構を利用し圧力をかけることでダイヤ形状になるSwitchPenと、お互いのアプローチから学び合うことで、今後もサステナブルな容器開発に取り組んでまいります。