リサイクル材を使うことで、温室効果ガス(GHG)排出量を削減したポリオレフィンボトル●材料調達時および製品廃棄時(焼却処理など)のGHG排出量が少ない●多層成形により、リサイクル材を挟むことで、生活用品などの幅広い非食品用途に使用可能
現行のポリオレフィンボトルは、石油由来の原料を使用しており、原料調達時および製品廃棄時(焼却処理など)のGHG排出量が多い状況です。この課題を解決するため、ポリオレフィンのリサイクル材を約60%添加したボトルを使用した生活用品を製品化しました。これにより原料調達や廃棄・リサイクル工程でGHG排出量を約30%削減※できました。※ 削減効果は東洋製罐グループホールディングスでの試算結果
メビウスパッケージング株式会社営業部板橋和孝(左)開発技術部田中健二朗(右)
板橋:ライオンさまより、モデルチェンジのご相談をいただいたことがきっかけです。今回のモデルチェンジでは、環境対応を目的として、形状の変更、軽量化、ポリオレフィンのリサイクル材を使用することなどのご要望をいただき、容器の開発を進めていくこととなりました。
板橋:ライオンさまより開発依頼をいただいた2021年当時、ポリオレフィンのリサイクル材を使用した容器の開発は、当社としては新しい試みでした。当初は容器の質量や肉厚などの成形が不安定で、品質を保つことが難しく苦しい状況が続きました。しかし、開発技術部にて、成形が安定しない原因を追究し、また、リサイクル材の改善案をライオンさま、リサイクル材メーカーさまにご提案・ご協力いただけたことから、開発を進めることができました。
田中:樹脂メーカーから調達している従来の石油由来の原料は、物性のばらつきが小さく、安定した成形が可能です。それに対し、市場回収したプラスチックを粉砕・洗浄したリサイクル材は、ばらつきが大きく、安定した成形がとても難しい材料です。開発当初は、ばらつきの原因と対策をみつけることに苦労しました。容器成形メーカーとして、物性のばらつきに起因する成形と品質課題を検証しつつ、リサイクル材の加工方法などについて、何度もライオンさま、リサイクル材メーカーさまと試行錯誤を繰り返したことで、無事製品化することができました。これは3社の粘り強い協業が実を結んだと考えています。
板橋:リサイクル材を使用した容器は、材料の特性上、外観や強度不足による輸送時の変形などの懸念点があるものですが、製品を発売してから1年経った現在でも特に問題はなく、石油由来の原料の容器同様にご使用いただいています。ポリオレフィンにおいても、リサイクル材でのボトル成形が可能であるという好例を、社会に対して示すことができたと考えています。
田中:本製品はリサイクル材を約60%添加しており、市場の同様の製品の中でも非常に高い添加率です。ライオンさまと当社は、今後も製品中のリサイクル材使用比率アップおよび他製品への展開により、リサイクル材の総使用量をさらに上げていきたいと考えています。「リサイクル材だから仕方ない」と妥協するのではなく、どうすれば実現できるかを考えて挑戦していきます。
ソフランプレミアム消臭 ※共同受賞:ライオン株式会社殿・公益社団法人日本包装技術協会「2024日本パッケージングコンテスト」 ジャパンスター賞-経済産業省脱炭素成長型経済構造移行推進審議官賞・「AsiaStar Award 2024」 Eco Package部門賞・「WORLDSTAR GLOBAL PACKAGING AWARDS」 WorldStar Award 2025-Household部門賞
これまでリサイクル材を使用するのが難しかった製品で、リサイクル材を使用できるようにしたのは素晴らしい取り組みだと思います。密封性や製品保護性能といった要求品質とのせめぎ合いの中での開発と思いますが、今後、ぜひリサイクル材100%使用に向けて進められることを期待しています。同時に、世の中では膨大な数のプラスチックボトルが使われていると思いますので、この取り組みがいろいろな分野や領域に拡がることを期待しています。