使用済み紙コップと工場損紙※を再利用した飲料用紙コップサーマルリサイクル(焼却)されていた使用済み紙コップを再資源化し、再生パルプとして原材料である原紙の一部に配合※ 成型不良品、裁断によって出た不要部分など
廃棄物になった紙コップを新しい紙コップに水平リサイクルした製品です。水平リサイクル実現のために、リサイクルスキーム※を確立しました。※ 使用済み紙コップは食品や飲料の汚れを取り除くことで、再生紙製造プラントに持ち込み、再生紙原料を抽出できるようになります。東洋製罐グループでは、紙コップ由来の再生紙原料を用いて新しい紙コップを製造する「CUP to CUP」の取り組みも進めています。モノからモノへと限りある資源を再利用できるサーキュラーエコノミーの実現を目指し、Re-CUP WASHERを使用した紙コップ洗浄とリサイクルの啓発活動に取り組んでいます。
本製品は使用済み紙コップと工場損紙からの再生パルプを使用しています。工場から生じた損紙は、これまでトイレットペーパーなどに再利用されていましたが、より高品質な紙コップ用原紙に再利用し、再生パルプを25%配合することで、バージンパルプの使用量を削減しました。これにともない、GHGの排出量を約10%削減※しました。※ 原紙製造時のGHG排出量として、紙コップ規格SM-205(満杯容量211mL)との比較(東罐興業算出)
再パルプ化工程でわずかに残ってしまった細かなインキ片やラミ片が混入すると、紙コップ表面に浮き出て斑点に見えてしまいます。そのため、原紙を3層構造にして、中間層にのみ再生パルプを配合することで、外観からインキ片やラミ片が見えにくくなるよう工夫しました。
バージンパルプを再生パルプへ置き換えると、紙コップ成型時に必要な原紙強度が低下する可能性があるため、比較的繊維の長いバージンパルプを増やすことで原紙強度を向上しました。
東罐興業株式会社技術開発本部池田 祐輔
環境対応の課題は本製品の開発以前からあり、その過程で再生パルプを配合した紙コップが発案されました。今までにも再生パルプを配合した紙容器はありましたが、人の口や飲料に直接触れる容器に再生パルプを配合したのは当社初の試みです。
衛生面の調整・改善で特に苦労しました。飲食用の容器に使われる紙コップや紙カップ原紙には、その他の容器以上に厳しい衛生基準があります。安心してお客さまにご使用いただくためには、再生パルプを配合した原紙もその衛生基準と同等かそれ以上とする必要がありました。そのため、再生パルプを配合した原紙の衛生基準を見直し、基準に沿った原紙の製造を原紙メーカーさまに依頼しました。また、現行品の紙コップと同じ工程で成型するために、紙質も調整する必要がありました。本製品は、市場から回収した再生紙原料の中でも、高品質なものを分別できる技術を持つ原紙メーカーさまとの協業により実現できたと考えています。
開発した製品をお客さまにご提案したときは、インキ片の混入は気にならないと仰っていただけましたが、実際に消費者にご使用いただかないと反応がわからないので、最初は試験的に導入することとなりました。導入後も気になったという意見はなく、現行品と違和感なく受け入れられているのは良いことと捉えています。
現在は小型の飲料用紙コップで展開中ですが、今後は食品用紙カップを含めた、さまざまな規格で展開を考えています。将来的には100%再生パルプ紙コップを上市したいです。また、現在も取り組んでいることですが、紙コップがリサイクルできることの認知拡大にも努めていきます。紙コップは撥水加工のラミネートが施されているため、古紙回収の対象にならずリサイクル可能であることがまだまだ認知されていないのが現状です。より多様な業界に本製品を導入いただくことで、お客さま、原紙メーカーさまや商社さまなどと一緒に認知拡大に取り組みます。
これまで廃棄されていたものを再生材料として活用することは素晴らしい取り組みです。多層化の技術はもともとあったものですが、使用後に回収された素材を有効に活用できるよう、さまざまな工夫をされていることと思います。技術的には100%再生パルプを使用することも可能とのことで、今後、ユーザーや社会の意識啓発にも、ぜひつなげていってほしいと思います。