缶の内外面塗装が不要な環境配慮型製品であるスチール製2ピース缶「TULC」に、異形加工技術を付加することにより強度を確保し、さらなる軽量化を実現。原材料の削減により、環境負荷を低減。
TULCは、缶の内外面塗装を不要とする独自の製造技術を採用した環境配慮型のスチール製2ピース缶です。缶内外にポリエステルフィルムを熱圧着することで、従来の塗装工程や潤滑剤の使用を削減し、環境負荷を大幅に低減しており、1991年に登場以来、国内、海外ともに数多くの製品にご使用いただいています。・内外面塗装不要で、塗装の焼付工程を省略・潤滑剤不要で、洗浄工程の削減により廃棄物を大幅削減・温室効果ガス(GHG)排出量を削減
規則的なパネル加工を施すことで外圧に対する強度が上がり、加工の位置を工夫したことで、側壁板厚を従来品よりもさらに薄くすることを可能にしました。この技術により、現行の異形缶から7.5%の原材料削減を実現しました。
東洋製罐株式会社テクニカルセンター メタル技術開発部山田真司
構想が上がった2019年当時、業界全体でスチール缶の販売数量が減少していました。そこで、競争力向上のために板厚を薄くして、コストダウンすることを検討しました。当時のTULC製品ラインナップの板厚は、すでに実用化レベルの限界まで薄く、これ以上薄くすることは難しいと考えられてきました。しかし、ミサンガ缶(ミサンガ模様の異形加工缶)は外圧に対する強度に余裕があり、さらに薄くできる可能性があったため、開発を進めることになりました。
今まで実績のない板厚であり、従来缶よりも衝撃に弱くなってしまうため、変形やへこみの対策に苦労しました。製缶から市場流通までさまざまなトラブルが発生しましたが、お客さまにもご協力いただきながら対策試験を重ね、段階的に開発を進めていきました。こだわった点は、凹凸形状の最適化です。加工位置などを最適化することで板厚を薄くしても衝撃に耐えられるように工夫しています。
飲料メーカーさまの製品で採用いただきました。現行缶としてミサンガ缶をすでに導入いただいていたため、外観がほぼ変わらないままコストダウンできたこと、当社の技術力と環境負荷低減への貢献について評価いただきました。
今後も、当社が得意とする異形加工技術によって、環境負荷低減に貢献できる製品の開発を進めていきたいと考えています。それと同時に、飲料缶全体の環境負荷低減を目指して、環境に配慮した製品の拡販に努めていきます。
薄肉化では対応できないレベルのパネリング強度の確保を、「異形加工技術」という特殊な技術で実現されたこと、これまでの長年の研究や開発の成果の1つなのだと理解しました。開発の背景や今後の展開の可能性など、非常に興味を持ちました。軽量化への飽くなきチャレンジに期待しています。