上唇で飲み口を軽く押すだけで簡単に飲むことができる飲料コップ用のフタ(リッド)●従来品にはなかった新しい機能と使いやすさを追求●樹脂使用量、樹脂原料由来の温室効果ガス(GHG)排出量を削減
飲み口の突起部に上唇を軽く押し当てることで飲み口が開き、コップを傾けて飲むことができるノンアクション方式のフタです。高齢者や手指の不自由な方でも比較的簡単に飲むことができます。また、唇を離すと飲み口が閉じ、虫やほこりの侵入を防ぐほか、移動時などの振動による液漏れも防ぎます。
飲み口を押すと、鼻孔付近の切り込み(香り窓)が開き、飲みながら香りを楽しむことができます。
ストロー飲用品(平フタ+樹脂ストロー合算※1)に比べ、樹脂使用量を約20%削減しました。これにともない、樹脂原料由来のGHG排出量※2を約20%削減しました。※1 東罐興業製の同じ口径のフタ+ストローとの重量比で計算※2 樹脂原料製造時のGHG排出量として
東罐興業株式会社技術開発本部相馬克彦
お客様(コンビニエンスストア)から飲料用コップのフタの樹脂使用量を削減してほしいと要望があったのがきっかけです。お客様側に環境負荷低減の一環として樹脂使用量削減の課題があり、従来より、段階的に取り組みを進めてきました。しかし、形状を維持したままの取り組みには限界があり、品質を保てなくなってしまうため、樹脂使用量を削減できる新しいフタを開発することとなりました。また、お客様から、飲みながらコーヒーの香りも同時に楽しめる機能の付与について追加要望をいただき開発がスタートしました。
製造時、飲み口と香り窓は刃で打ち抜いて切りますが、量産しても切れ方に不具合が出ないよう調整することに苦労しました。唇で軽く開けられて、唇を離すとフタが閉まるちょうどいい切り口にするため、生産立ち合いを通じて、刃の硬さ、角度、当て板の硬さ、つなぎ目の太さなど細かく調整していきました。そのおかげで2023年に市場に出てから今(2024年現在)まで品質を保ち量産することができています。
飲みやすい、香りを感じられる、軽量化が実現できた、ブロッキング(フタを重ねるとフタ同士がはまって取れなくなってしまうトラブル)が改善できたといった声をいただきました。薄くするほどブロッキングしやすくなりますが、本製品は外観を損なうことなくランダムに窪みを作り、重ねてもわずかにズレが生じるように設計したことで、ブロッキングしにくくなりました。
ホットドリンク用や紙製のフタへの展開を検討中です。現在はコンビニエンスストアを始めとしたお客様に導入いただいていますが、今後はカフェチェーンやファストフードなど、飲料を扱うお客様全般に広く導入いただくことを目指しています。
・公益社団法人日本包装技術協会「2022日本パッケージングコンテスト」 包装部門賞-飲料包装部門賞・公益社団法人日本包装技術協会「2024日本パッケージングコンテスト」 包装技術賞-アクセシブルデザイン賞
蓋を上唇で押してから飲むというアイデアには感心しました。手指の不自由な人にも対応できる製品ですね。押して飲むということが一目で分かるように、使用方法を絵で表示するなどの工夫を検討しても良いかと思います。
まったく新しいソリューションの提案、素晴らしいと思います。しかも、香り窓を設けることにより、消費者に飲み物のアロマを感じてもらうなどプラス価値も提供しています。新しい飲用方法であることから、飲み方の効果的な啓発・周知のしかたができるかどうかが大きな鍵を握っていると考えます。