脱炭素社会へ向けて

大気中の温室効果ガス(以下GHG)濃度上昇に伴う地球温暖化の進行は、人々の生活や社会に大きな負の影響を与えます。東洋製罐グループは事業活動、製品、サービスの双方からGHG削減に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献します。

TCFDおよびTNFDの提言に基づく統合的な情報開示

Scope1、2削減の取り組み

電力の再生可能エネルギー化

東洋製罐グループは、事業活動によるGHG排出量を削減する取り組みの一環として、太陽光発電設備の導入を進めています。

太陽光発電設備を導入(オンサイト)

東洋製罐グループは、2024年度において、新たに国内8拠点および海外1拠点に太陽光発電設備を導入しました。


2024年度導入実績

東洋製罐 静岡工場

日本トーカンパッケージ 仙台工場

東洋製罐グループエンジニアリング 福島工場

※ 太陽光発電と非化石証書を活用した電力購入を組み合わせ、CO₂排出 実質ゼロを達成

Next Can Innovation Co., Ltd.

営農型太陽光発電設備を導入(オフサイト)

東洋鋼鈑では、中国電力株式会社(以下「中国電力」)との間で、オフサイトPPA※1に関する契約を締結し、営農型太陽光発電設備の導入を進めています。中国電力が株式会社エコスタイルおよび株式会社彩の榊と協力して、営農型太陽光発電所を新たに計64MW開発し、発電した電力と環境価値を下松事業所に供給する予定です。なお、営農型太陽光発電※2を活用したオフサイトPPAは、中国地域では初の取り組みとなります。下松事業所では2030年度までに使用する電力量の約20%を追加性※3を有するグリーン電力に置き換える計画であり、これにより年間約25,000tのGHG削減効果が期待されます。また、この取り組みにより、耕作放棄地の再生利用や農業経営の改善による地域農業の活性化にも寄与することが期待されます。

  • オフサイトPPA(Power Purchase Agreement):発電事業者が電力需要施設と離れた場所に太陽光発電設備を設置し、再エネ電力を小売電気事業者が電力系統を経由して特定の需要家へ長期にわたって供給する電力購入契約のこと
  • 農地の上部空間に太陽光発電設備を設置することで、農業と発電を両立させる方法。これにより、耕作放棄地の再生利用や農業経営の改善、農作物の栽培による二酸化炭素の削減などが可能となり、再エネ導入量の拡大にも寄与する
  • 既存の再エネ設備の利用ではなく、新たに太陽光発電設備を設置するなどして再エネの導入量を拡大する効果があるものを指す

省エネルギー化

川崎市よりスマートライフスタイル奨励賞を受賞

メビウスパッケージング川崎工場は、2023年10月18日、川崎市の第12回スマートライフスタイル大賞表彰式において奨励賞を受賞しました。 スマートライフスタイル大賞は、CO2削減・地球温暖化対策の推進を目的として創設された賞で、川崎市が市民や事業者などから、省エネ・節電などのさまざまなCO2削減行動の取り組みを募集し、優れた取組を表彰しています。川崎工場は今回、工場での省エネ活動が評価され、受賞につながりました。

熱源転換・新技術

大型ガラス溶融窯に酸素燃焼方式の導入

東洋ガラス株式会社は、2025年12月に予定している千葉工場ガラス溶融窯1基の大規模修繕にあたり、燃焼方式を空気燃焼から酸素燃焼に変更します。一日当たりの生産能力が200tを超えるガラスびん用大型ガラス溶融窯に酸素燃焼方式を導入するのは国内初となります。この方式の導入により、溶融窯1基あたりのGHG排出量が約20%削減されることが見込まれます。 【2024年5月24日プレスリリース】東洋ガラスが大型ガラス溶融窯に酸素燃焼方式を国内初導入-温室効果ガス排出量削減に寄与-

長期的なCO₂削減を実現する酸素水素燃焼システム「MEGR system®」を開発

現在のガラス溶融窯では、ガラスを高温で溶融するために化石燃料が使用されており、二酸化炭素の排出量削減がガラスびん業界の課題となっています。東洋ガラスでは、国が目指す2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、二酸化炭素を排出しない燃料である水素を活用した「酸素水素燃焼窯」の開発を進めています。 【2024年6月28日プレスリリース】東洋ガラスが提案した「オンサイト型水素供給設備を備えたガラス溶融窯の開発」がNEDO事業として採択

CO₂回収

CO₂分離回収技術の早期社会実装に向けた3社共同の取り組みを開始

東洋製罐グループホールディングスは、株式会社JCCL(以下、「JCCL」)が保有するCO₂分離回収技術の早期社会実装を加速させるため、JCCL、三井物産プラスチック株式会社(以下、「三井物産プラスチック」)との3社共同の取り組みを進めることに合意しました。
2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けて、CO₂を分離回収する技術が注目されています。JCCLが保有する省エネルギー型CO₂分離回収技術を早期に社会実装するため、東洋製罐グループが包装容器の製造で培ってきた技術力および三井物産プラスチックの販売網等を活用し、共同で取り組みを開始します。 【2025年3月31日プレスリリース】JCCL×東洋製罐グループホールディングス×三井物産プラスチック CO₂分離回収技術の早期社会実装に向けた3社共同の取り組みを開始-CO₂を低コスト・高効率で回収する技術で環境負荷低減に貢献-

Scope3削減の取り組み

原材料の低炭素化および環境配慮型製品の提供

缶底耐圧強度向上技術(CBR)による軽量アルミ缶

東洋製罐は、飲料缶の底部をリフォームして強化し、軽量化を可能とする缶底耐圧強度向上技術(CBR(Compression Bottom Reform))を使用したアルミ飲料缶の開発を実現しました。この技術は、aTULC缶胴径202径(190ml)とアルミDI缶胴径211径(350ml・500ml)に採用されています。これにより、GHG排出量のさらなる削減が期待されます。 【2024年3月26日プレスリリース】東洋製罐が国内最軽量アルミ缶の開発を実現、量産を開始-温室効果ガス排出量削減へのさらなる貢献- 【2024年8月29日プレスリリース】東洋製罐の世界最軽量アルミ缶 コカ・コーラ社の「ジョージア」で採用、量産開始-GHG排出量のさらなる削減を実現-

無溶剤型パウチの増産体制で温室効果ガス(GHG)排出量を大幅削減

東洋製罐豊橋工場では、無溶剤型の生産ラインをレトルト食品用パウチの生産にも対応できるように開発したことから、無溶剤型生産ラインを増設しました。無溶剤型ラインは、溶剤型ラインと比較してGHG排出量を1ラインあたり約94%削減し、有機溶剤使用量も大幅に削減することができます。2024年3月には、この取り組みが評価され、豊橋商工会議所「第12回環境経営賞」最優秀賞を受賞しました。今後も東洋製罐は環境に貢献できる製品づくりを通して、持続可能な社会の実現に向けて取り組みます。

  • 利益の追求と環境負荷の低減を両立しながら、地域企業が行っている先進的かつ実践的な取り組みを積極的に広く発信することで、環境経営の考え方を普及浸透させることを目的とした賞
表彰式の様子

従来の高炉製原板から電炉製原板への代替を図った製品を開発

東洋鋼鈑は環境への貢献を目的として、樹脂化粧鋼板(製品名:ビニトップ、ファイントップ) の基材として使用される溶融亜鉛めっき鋼板において、従来の高炉製原板から電炉製原板への代替を図った製品を新たに開発し、販売を開始しました。
この取り組みにより、東洋鋼鈑のScope3排出量の削減に寄与するとともに、樹脂化粧鋼板を使用するお客様のScope3排出量削減にも貢献が期待されます。 【2024年8月1日プレスリリース】東洋鋼鈑が環境に配慮した樹脂化粧鋼板を新たに開発、販売開始

モーダルシフト・新技術

物流における環境負荷低減の取り組み

東洋製罐グループは、環境負荷を低減する輸送や倉庫業務への取り組みを積極的に実施することで、物流におけるGHG排出量の削減に努めています。 輸送・配送業務においては、お客さまに最も近い工場での生産計画の立案、全国の拠点を活かした高効率な輸配送、エコタイヤ装着の推進、トレーラーの活用および大型車両の積載率アップや納品を終えた後の復路便の活用、お客さまやパートナー企業との共同配送の実施などの取り組みを行っています。 倉庫業務においても、省エネルギー設備の導入や生産拠点と得意先群の間に在庫を配置するハブ倉庫の整備を行っています。 また、物流業界のトラック運転者不足が深刻になっていることを受け、持続可能な物流の実現を目指す「ホワイト物流」推進運動に賛同し、取り組みを進めています。この推進運動は同時に環境負荷低減にも寄与するものと考えています。

モーダルシフトの推進

東洋製罐グループは、トラックに比べてGHG排出量が少ない鉄道・海上船舶輸送に転換するモーダルシフトを推進しています。輸送品の特性に配慮しつつ、環境負荷低減とトラックドライバー不足などの問題解決に取り組んでいきます。

これまでの主な取り組み

※表は左右にスクロールできます

2015年10月

東洋ガラス物流

輸送効率の良い大型31ftコンテナを採用
千葉工場と滋賀工場間の製品輸送を鉄道輸送へシフト

2017年12月

東洋製罐
東洋メビウス

31ftコンテナを採用
関東~関西での缶蓋輸送を鉄道輸送へシフト

2018年11月

東洋メビウス

第5回モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)を受賞
関東~関西の缶蓋製品輸送におけるモーダルシフト化への取り組みが評価

2019年9月

東罐ロジテック

国土交通省 物流総合効率化法に基づく「総合効率化計画」に認定
共同申請者4社とともに、包装資材輸送におけるGHG排出量削減とトラックドライバーの運転時間短縮を目的とした取り組みを実施。全区間トラックによる陸上輸送から、輸送距離の9割以上を鉄道貨物輸送へ転換

2021年4月

東洋製罐
東洋メビウス

「令和2年度エコシップ・モーダルシフト事業認定事業者」に認定

2024年10月

東罐興業
東罐ロジテック

31ftコンテナを2基導入
小牧~福岡間、静岡~福岡間、福岡~静岡間(同年12月稼働開始予定)の製品輸送を鉄道輸送へシフト 東罐興業、東罐ロジテックが「物流2024年問題」対策として製品輸送の鉄道モーダルシフトを拡大-温室効果ガス排出量8割削減に向けて-

2025年7月

東罐興業
東罐ロジテック

自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた「モーダルコンビネーション」の実証を、2025年7月14日より関東ー九州間で開始 東罐ロジテック・全国通運・日本貨物鉄道・T2 自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた「モーダルコンビネーション」関東-九州間で初めての「往復」の実証を開始~2027年にレベル4自動運転での輸送を目指す~

その他の取り組み

容器包装関連団体との3R推進や気候変動緩和活動

東洋製罐グループは、日本国内の容器包装8素材(スチール缶、アルミ缶、プラスチック製容器包装、PETボトル、紙製容器、飲料用紙容器、段ボール、ガラスびん)のうち7素材の容器包装を製造しており、3Rを推進する各素材の個々の団体やその連合団体への理事、委員および活動資金(会費)を拠出し、主要メンバーとして3Rの推進や気候変動緩和のための温室効果ガス削減活動を行っています。
2020年10月、日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。東洋製罐グループはこれに対応し、2021年に「低炭素社会」の実現から2050年のカーボンニュートラルを目指した「脱炭素社会」の実現に変更し、2030年度に向けた中長期目標を上方修正しました。また、東洋製罐グループは、「エネルギー使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」や「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」等、国の気候変動に関連する法規制を支持し、年に1回行政へエネルギー使用量、省エネルギー目標の達成状況、温室効果ガス排出量の報告書を提出しています。そして、国が推進しているTCFD提言への取り組みを支持し、情報を公開しています。

ZEB認証の取得

東洋製罐グループは、省エネルギー性能をはじめとする高い環境性能を持つ建物の取得・開発・建設を推進し、グループ全体の事業活動を通じた環境負荷の低減に取り組んでいます。
貨物自動車運送業や倉庫業を手掛けている東洋メビウスは、2023年4月より埼玉県熊谷市に建設した物流倉庫「熊谷物流センター」の営業を開始しています。本施設は、その優れた省エネルギー性能が高く評価され、ZEB認証を取得しました。ZEB認証は省エネ、創エネを組み合わせることで、建物が年間で消費するエネルギーゼロ(マイナスを含む)を目指した場合に付与されるものです。

  • ZEB認証:最上位「ZEB」ランクを取得
    ZEB(Net Zero Energy Building)は、快適な室内環境を維持しつつ、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した建物に与えられる認証です。
    ZEBの定義について(環境省Webサイト)
  • BELS認証:最高ランクとなる★5を取得
    BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System/建築物省エネルギー性能表示制度)は、国土交通省が定めた基準に基づき、建築物の一次エネルギー消費量による省エネルギー性能評価を5段階(★~★★★★★)で行う公的な評価制度です。
  • CASBEE不動産評価認証:建築評価Aランクを取得
    CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、環境配慮・快適性・景観などの観点から建物の総合的な環境性能を評価する国土交通省主導の制度です。

次世代電池用負極集電体の開発が経済産業省の「蓄電池に係る供給確保計画」に認定

東洋鋼鈑が、山口県下松事業所で取り組む次世代電池用負極集電体の開発において、2024年12月20日に経済産業省「蓄電池に係る供給確保計画」として認定されました。 東洋鋼鈑は、今回認定された政府支援を最大限活用して開発を進め、2027年度末までに将来的な量産(蓄電池3GWh/年相当以上)に向けた投資の意思決定を行うことを目指し、長寿命・高効率な蓄電池の普及と蓄電池部素材のサプライチェーンの基盤強化に貢献していきます。 【2024年12月24日プレスリリース】東洋鋼鈑の全固体電池用負極集電体の開発が経済産業省の「蓄電池に係る供給確保計画」に認定

Environmental(環境)