従業員の尊重:人的資本への取り組み

東洋製罐グループは、グループ一体となって人材の育成・活躍を推進しています。2018年には経営理念の実現に向けて「東洋製罐グループ人事ポリシー」を制定、「自律的成長の実現(人材の育成)」「多様な人材の共創」「働き方の改革」「健康経営」を4つの柱とし、社内環境の整備に取り組んできました。そして2023年、グループの総合力の強化と、人的資本経営を企業価値の向上につなげていくことを目的として、人材育成方針と社内環境整備方針を策定しました。人的資本の拡充を通して、企業価値の向上につなげていきます。

人材育成方針

グループの経営戦略・組織戦略

当社グループは、「既存事業領域を維持しながら、グループのリソースを最大限活用して新規事業領域での収益を拡大すること」を経営戦略の基本としています。この戦略を実現するため、2013年にホールディングス体制に移行し、①戦略部門の設置と拡充、②オペレーション業務の集約・統合、③ガバナンス体制の構築を行ってきました。2021年には「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を策定し、社員への浸透活動を進めています。

求める人材像

上記の経営戦略・組織戦略を実現するために必要となる人材像は、以下の3つに大別されます。

  • 既存事業のオペレーションを高いレベルで(品質・コスト・納期+ESGの視点で)維持・継続できる人材
  • 既存事業のオペレーションを熟知しつつ、グループ全体最適の視点で新たな仕組みを構築できる人材
  • グループのリソースを活用して新たな製品・技術・事業を生み出せる人材

①の人材を確保したうえで、②・③の人材(“グループ人材”)をいかに増やすかが課題です。

人事戦略

上記の人材を育成するための人事戦略を以下のように整理しています。

  • グループ人事ポリシーに基づく人材マネジメントを推進することにより、働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上を図る
  • 製造部門の人材確保のための環境整備
  • 主要なグループ会社の大卒定期採用について、グループ一括採用を継続し、採用競争力の強化とグループ意識の向上を図る
  • 会社の枠を超えた協働、人材交流によりグループ意識の向上と新たな視点の醸成を促進する
  • 多様な知見を持つ人材をキャリア採用で積極的に獲得する
東洋製罐グループ人事ポリシー

KPI

人事戦略実現のためのKPIを以下のように整理しています。

※図は左右にスクロールできます

人事戦略実現のためのKPI

「エンゲージメント」、「総合健康リスク」、「成長できる職場」のスコアは、(株)保健同人フロンティアの「HoPEサーベイ」を使って測定しています。「エンゲージメント」は、「組織への愛着」「役割の遂行(意思・意欲)」「仕事に対する向上心」の3つの観点から測定しています。

グループ各社の「1人当たりEBITDA」と「エンゲージメント」等の多くのKPIの間には相関関係が見られることから、グループ人事ポリシーに基づく取り組みを継続し、それぞれのKPIを改善することで、KGIである「1人当たりEBITDA」の改善につなげていく方針です。

特に重要性の高い課題

「製造部門のエンゲージメント向上」「30代社員のエンゲージメント向上」「女性管理職比率向上&男女賃金格差の解消」「グループ意識およびグループ内人材流動化比率の向上」の4点を特に重要性の高い課題と認識しています。

製造部門のエンゲージメント向上

「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を設定している2050年に向けて、国内の18歳人口が大きく減少する一方で、大学等への進学率が上昇するため、高校を卒業して社会人として働き始める若者の人数が現在よりも大幅に減少すると見込まれます。そうした状況下でグループの事業を継続するためには、製造部門で働く社員のエンゲージメント向上による離職率低減と採用競争力強化が重要です。エンゲージメントは長時間労働や身体負担との相関関係が強いことから、交替シフトの見直しを含めた長時間労働の解消や、省力化投資による身体負担の軽減に取り組みます。

当社グループ(7社)の部門別・年代別エンゲージメント(2023年度)

30代社員のエンゲージメント向上

社員のエンゲージメントを年代別に分析すると、30代が他の年代に比べて低い傾向にあります。20代に比べ、心理的な仕事の負担(量)が増える一方で、上司・同僚による支援が減少し、成長実感が下がることが大きな要因と考えられます。対策として、30代社員と上司を対象としたキャリア研修とキャリアコンサルティング面談を実施しました。今後、幅広い年代の社員に対するキャリア形成支援を充実させるべく、検討を進めています。グループ内の公募制やキャリア自己申告の拡充も検討中です。

女性管理職比率向上&男女賃金格差の解消

東洋製罐グループホールディングスの女性管理職比率は6.7%、グループ13社の平均は4.1%ですが、13社の内訳は過去の取り組みの差もあり、0.0~14.3%と大きな差が見られます。
男女賃金格差も同様に、当社の男女賃金格差は96.4%、グループ15社の平均は69.6%ですが、15社の内訳は61.1%~96.4%と大きな差が見られます。そこで、2030年度の目標値として、女性管理職比率については当社14%超かつグループ6%超、男女賃金格差についてはグループ80%超を掲げてグループ全体の改善に向けた取り組みを進めています。具体的には、本年度、人権・DE&I推進分科会の下部組織としてダイバーシティ推進部会を設けました。各社のグッドプラクティスの共有に基づく施策提言のほか、参加メンバー同士の交流などを通してグループ全体の改善を図ります。
正社員の賃金項目別男女賃金格差については、基本給よりも賃金項目合計の格差が広がっています。基本給の格差は管理職、非管理職ともに90%前後ですが、家族・住宅手当や時間外・交替手当の格差が大きいためです。
また、女性管理職比率が低いため、管理職・非管理職別に見た男女賃金格差よりも、正社員合計の格差が広がっています。
今後の改善に向け、女性正社員の採用増・定着率向上と上位役職・等級への登用(内部昇進者のキャリア開発拡充と、役職者の中途採用)、家族・住宅手当の支給要件の見直しや、男性社員の長時間労働是正による男女賃金格差の解消を継続的に進めていく方針です。

グループ意識およびグループ内人材流動化比率の向上

グループの経営戦略実現には、社員のグループ意識を高め、人材流動化を進めることが必要です。このような趣旨から、KPIに、「グループの理念・ビジョンの浸透度」、「中核人材のグループ他社経験比率」を設定しています。中核人材は、主要なグループ会社において選抜された将来のリーダー候補を指します。2021年に策定したグループ長期経営ビジョンの浸透を図るとともに、グループ横断の職種別要員計画等を整備することにより、人材流動化比率を高めていきます。

社内環境整備方針

  • 当社グループは、「次世代経営人材育成研修」(部長層対象)および「TSGBC(東洋製罐グループビジネスカレッジ)」(課長層対象)の実施、人事制度の共通化、ITインフラ(タレントマネジメントシステム、ストレスチェックシステム等)の整備を進めてきました。2021年入社からは、優秀な人材の確保と、グループを牽引するリーダーの育成を目的として、主要なグループ会社の大卒定期採用を、グループ一括採用に切り替えています。
  • 今後は人材育成方針に則り、交替シフトの見直しや省力化投資、年代別キャリア研修の実施、公募制やキャリア自己申告の拡充、家族・住宅手当の支給要件見直し、職種別要員計画の作成等を進めていきます。

マテリアリティ「従業員の尊重」における指標と目標

  • 表は左右にスクロールできます
マテリアリティ項目 目標年度 KGI 実績
2022年度 2023年度
女性管理職比率※1,3 2030 6%超 3.4% 4.4%
女性採用比率※3 2025 30%超 22.4% 17.5%
男女の平均継続勤務年数の差異※2,3 2025 3年以内 3.4年
(男性18.7年、女性15.3年)
3.1年
(男性18.3年、女性15.2年)
10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別継続雇用割合※2,3 2025 70%超 男性64.5%、女性50.0%
(総合61.8%)
男性62.3%、女性50.5%
(総合60.5%)
1人当たりEBITDA※4 2025 550万円以上 302万円 454万円
エンゲージメント※3,5 2025 52.7以上 50.7 50.8
グループの理念・ビジョン浸透度※3,6 2025 80%以上 51%
総合健康リスク※3,5 2025 100以下 103 103
成長できる職場※3,5 2025 52.9以上 51.9 51.8
中核人材のグループ他社経験比率※3 2025 60%以上 54.6% 59.1%
時間外45h超過者数※3,7 2025 2.7人 5.7人 5.0人
  • 各次年度4月1日現在
  • 各年度3月31日現在
  • 対象:東洋製罐グループホールディングス、東洋製罐、東洋鋼鈑、東罐興業、日本クロージャー、メビウスパッケージング、東洋ガラス
  • 連結EBITDAを連結従業員数で除して計算しています
  • (株)保健同人フロンティアが提供する「HoPEサーベイ」を使って測定しています。また、「成長できる職場」は社員が自身のキャリアアップと成長がイメージでき、自律的・主体的に関わることができる職場か否かを測定する指標です
  • グループの理念・ビジョンを「理解している」「ある程度理解している」と回答した社員の割合です。2023年度の実績から開示を開始いたしました
  • 各年度における100人・月当たりの平均発生人数を、管理職を除いて算出しています。昨年公表した2022年度実績値に誤りがあったため修正しています